クラシカルなラウンドブーケの魅力・美しいフォルムを追求するワイヤリングという技法
ウェディングブーケにも、その時代ならではのトレンドがあります。近年は、茎をそのまま生かしたナチュラルなクラッチブーケをよく見かけますが、クラシカルで気品のあるラウンドブーケにも、変わらない魅力があると思っています。
私が特に美しいと感じるのは、なだらかなお椀のような、つるんとした均等な丸みを持つラウンドブーケ。そんな美しいフォルムを追求するとき、私が選ぶ技法のひとつが「ワイヤリング」です。
クラシカルなラウンドブーケが持つ美しさ
ラウンドブーケは、花を丸くまとめたウェディングブーケの定番スタイルのひとつです。可愛らしい印象を持たれることもありますが、花材や色の組み合わせによって、上品にも、モダンにも、そしてクラシカルにも仕上がります。
私が目指しているのは、正面からだけでなく、横から見ても美しい曲線を描くラウンドブーケ。花嫁さまは結婚式の間、ずっと正面を向いているわけではありません。歩いているとき、ゲストとお話ししているとき、横から写真を撮られるとき。
そんな何気ない瞬間にも、ブーケのフォルムが美しく整っていると、花嫁さまの姿がより一層引き立つと思うのです。
花の向きや角度を調整できる、ワイヤリングの魅力

ワイヤリングとは、花材にワイヤーを施し、花の向きや位置を細かく調整できるようにする技術のことです。もちろん、茎をそのまま生かして束ねる方法でも、美しいラウンドブーケを作ることはできます。では、なぜ私はワイヤリングという方法を選ぶのでしょうか。
例えば、制作中に「この花をもう少し傾けたい」「この場所に、この角度で収めたい」と思うことがあります。アーティフィシャルフラワーは、もともとの茎にもワイヤーが入っているものが多く、ある程度自由に曲げることができます。ただ、私自身は、花の向きや角度を細かく調整するとき、元の茎のままでは思いどおりに収めにくいと感じることがあります。そんなときは、茎を処理してワイヤリングし直すことで、一輪一輪を狙った位置に配置しやすくなります。
すべてのブーケに必要な工程ではありませんが、思い描いたデザインを表現するために、私にとって大切な技法のひとつです。
23年前に身につけた、今も大切な技術
私がNFD(日本フラワーデザイナー協会)の資格を取得した約23年前は、キャスケードブーケの花材をすべてワイヤリングして制作する試験がありました。制限時間内にたくさんの花材を一本一本ワイヤリングし、ブーケとして完成させるのは、なかなか大変な作業でした。
当時、繰り返し練習して身につけた技術は、その後のブーケ制作にも長く生かされてきました。時代とともにウェディングブーケのスタイルも変わり、近年は茎をそのまま生かしたクラッチブーケを制作する機会が増え、ワイヤリングを使うことは以前より少なくなりました。それでも、花の向きや角度を繊細に調整したいときには、今でもワイヤリングという技法を選びます。
昔ながらの方法にこだわるのではなく、作りたいブーケに合わせて技法を選ぶこと。長年培ってきた技術も、今のデザインに合わせて生かしていきたいと思っています。
手間をかけることと、美しく仕上げること
ワイヤリングは、花材一本一本に施すため、数が多くなるほど時間と手間がかかります。デザインによっては100本以上のワイヤリングが必要になることもあり、花材の準備だけで数時間かかる場合もあります。ただ、私にとって、手間がかかることと技術的に難しいことは少し違います。
長年続けてきたワイヤリングの作業そのものよりも、難しいと感じるのは、草花の配置です。花の形や大きさ、色のバランスを見ながら、一輪一輪が美しく見える位置を探していく。花の高さを揃えて、なだらかな丸みを描くこともあれば、あえて高低差をつけて、ラフで動きのある表情に仕上げることもあります。同じ花材を使っていても、配置によってブーケの印象は大きく変わります。
私にとってワイヤリングは、決まった形を作るためだけではなく、思い描いたデザインを表現するための技術でもあります。時間をかけて花材を準備することも大切ですが、最終的な美しさを左右するのは、どこに、どの花を、どのように配置するかだと感じています。
生徒さまが制作されたラウンドブーケ

以前、JOLIES FLEURのレッスンで、生徒さまがワイヤリングによるラウンドブーケを制作されました。このブーケは、すべての花材にワイヤリングを施して仕上げたものです。バラやアジサイなどの花材を一本一本丁寧に処理し、花の向きや位置を調整しながら、少しずつ丸いフォルムへと組み上げていきます。根気のいる作業でしたが、生徒さまも最後まで丁寧に取り組んでくださいました。
完成したブーケは、正面から見た華やかさはもちろん、横から見ても美しい丸みを描いています。また、ワイヤリングで制作したブーケは、持ち手を細く、すっきりと仕上げやすいという特徴もあります。

ワイヤーで作った持ち手は、最後にリボンを丁寧に巻き上げて仕上げます。表から見える花の美しさだけでなく、持ち手や裏側まで整えることも、大切にしている工程です。
花嫁さまが持ったときに、いちばん美しく
ブーケが完成したら、正面からだけでなく、横からも眺めて全体のバランスを確認します。丸みが綺麗に整っているか、花同士の収まりに違和感がないか。ほんのわずかな違いでも、全体の印象は変わります。
そして何より大切なのは、花嫁さまが実際にブーケを持ったときの姿です。ドレスやその方の雰囲気にしっくりと馴染み、美しく見えること。ブーケそのものの美しさだけでなく、花嫁さまが持ったときに初めて完成する美しさがあると思っています。
時代が変わっても、大切にしたいこと
ワイヤリングは、時間も手間もかかる制作方法です。それでも私がこの技術を大切にしているのは、花の向きや角度を繊細に調整し、思い描いたフォルムを追求できるから。そして何より、そのブーケを持った花嫁さまの姿が、より美しく見えてほしいからです。
完成したブーケだけを見ていると、どんな方法で作られているかは分からないかもしれません。でも、花の向きひとつ、丸みのわずかな違いひとつにも、作り手のこだわりは表れます。時代とともにブーケのスタイルが変わっても、長年培ってきた技術を大切にしながら、これからも一束一束、丁寧に制作していきたいと思っています。